演奏会の動画配信やアップロードに必要な著作権の手続きなどについてJASRACに確認してみました
(Wind Band Pressより転載)
新型コロナウィルスの感染拡大防止のために各種演奏会が中止になっている昨今、それに伴いライブ配信や動画のアップロードを行う動きが活発になってきましたね。
それはそれでとても素晴らしいことだと思います。しかし著作権的に何も問題はないのか?音と映像を合わせるときに必要なビデオグラムの処理は?などいくつか疑問がわいてきたので、JASRACの広報部の方にお問い合わせをしてみました。
今回は「演奏会中止に伴いライブ配信や過去の演奏会動画のアップロードを行う」ことを想定して、どんなときにどんな手続きが必要か、または必要ないのか、をまとめてみます。許諾や手続きが必要な場合もありますのでしっかりと把握した上で、必要に応じて手続き(申請)を行って、法的に問題のないライブ配信やアップロードを行って頂ければ幸いです。
基本的に手続きが「必要ない」フローは以下の通りです。(JASRACのサイトより)
例外については後述します。
このフローはJASRACのサイトが見やすいのでリンクを貼っておきます。
https://www.jasrac.or.jp/info/network/pickup/movie.html
1. 動画で使用する音源は自作したもの(自ら演奏、または制作したもの)である。
↓
2. 動画をアップロードするのはJASRACと許諾契約を締結している動画投稿(共有)サイトである。
↓
3. 動画の配信方法は、リアルタイムでの配信(ライブ・生配信)以外に、タイムシフトやアーカイブでの配信も行う。(行わない場合は6へ)
↓
4. 動画の内容が「特定の企業や商品、サービスを宣伝するもの」ではない。
↓
5. 以下のいずれかに該当する。
・アップロードするのは「個人」である(企業や団体ではない)。
・アップロードするのは「企業」や「団体」であるが、動画で使用する楽曲は内国曲のみである。
↓
6.手続きなしでアップロードできます。
以上が基本的な「手続きなし」でアップロード・配信出来る条件です。
続いて、上記にあてはまらない場合についてです。
上記フローの2.について:
主にアップロードや配信をするのはYouTubeかなと思うのですが、YouTube、ニコニコ動画、FacebookはJASRACと提携しているので、JASRAC管理楽曲を含む動画をアップロードすることができます。ただしTwitterについては提携していません。サービス単位での許諾はなく、アカウント単位の個別申請を受け付けています。個別で手続きが必要となりますので、以下をご参照の上、手続きをする必要があります。
・動画配信での音楽利用(商用配信)
https://www.jasrac.or.jp/info/network/business/movie.html
・動画配信での音楽利用(非商用配信)
https://www.jasrac.or.jp/info/network/nbusiness/movie.html
続いて上記のフローにない例外的な話です。
■演奏楽曲にPDではない外国曲(JASRACが提携していない外国団体の管理楽曲)が含まれている場合(PD=パブリック・ドメイン:著作権が消滅している)
→この場合はJASRACでは許諾を出せないので外国団体に直接問い合わせる必要があります。
■演奏楽曲がすべてPDの場合に必要な手続き
→基本的には手続きは必要ありませんが、編曲著作物として管理を行っている場合がありますので、JASRACの作品データベース「J-WID」で著作権が消滅しているかの確認をする必要があります。
外国曲でもJASRACが提携している外国団体の管理楽曲の場合はJASRAC管理の内国曲と同じ扱い(手続き)で大丈夫なので、いずれの場合も「J-WID」で検索してJASRAC上の情報をチェックしてみてください。
▼J-WID
http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/
■過去の演奏会の動画のアップロードについて
1.演奏会を記録した者が団体ではなく外部の収録業者だった場合
2.プロの楽団などが市販されているDVDの映像を使用する場合
1.については、外部の収録業者から動画を複製したものを受け取る場合は、「外部の収録業者による複製」行為となりますのでビデオグラムの手続きが必要になります。
2.については権利処理が済んでいるDVDであれば、改めてビデオグラムの手続きは必要ありません。
1.2とも、JASRACの著作権手続の他に、実演家等の関係権利者の著作隣接権等の許諾が必要な可能性があるので。あらかじめ収録業者やDVDの映像の権利元等に許諾を取る必要があります。
■アップロードするのは「個人」か「団体」か、その線引は?
アップロードするのが「個人」であれば、割と上記のフローをスルスル通り抜けて「配信・アップロードOK」となる場合が多そうですが、「個人」か「団体」かわからない場合もありますよね。この点についても伺いました。
例えば
・ONSA吹奏楽団という市民吹奏楽団が自身で演奏した動画を撮影し、Youtubeでライブ配信または演奏動画のアップロードをする場合で、アップロードまたは配信を行うYoutubeのチャンネルは「ONSA吹奏楽団」名義のチャンネルで、ONSA吹奏楽団で管理している。
この場合、アップロードするのは「団体」という扱いになります。「個人」となるのはあくまで個人名でのアップロードのみだそうです。
ですのでフローの「5」にある
・アップロードするのは「個人」である(企業や団体ではない)。
には該当しません。
同じく「5」にある
・アップロードするのは「企業」や「団体」であるが、動画で使用する楽曲は内国曲のみである。
であればアップロード可能。
団体名義の場合、楽曲が内国曲以外の場合(外国の作品の場合)は、複製権に基づく手続き(ビデオグラムへの録音)が必要です。
団体の場合の流れとしては、まず利用予定作品がJASRAC管理作品かどうかを確認します。(J-WID)
http://www2.jasrac.or.jp/eJwid/
J-WIDで利用予定作品の「ビデオ」の管理状況を見て、JASRAC管理作品(一部管理含む)であることを示す「J」のマークが表示されている場合は、J-RAPP(オンラインライセンス窓口)による手続きに進みます。
※外国作品を利用する場合
JASRACに支払う使用料のうちの「基本使用料」は、日本国内の権利者である音楽出版者が指定した額(指し値)となります(一部例外曲あり)。申込前に音楽出版者に連絡し、基本使用料額をご確認ください。
↓
J-RAPP(オンラインライセンス窓口)による手続き
https://www.jasrac.or.jp/j-rapp.html
※ログインIDをお持ちでない場合はJ-RAPPトップメニューの「利用窓口開設申込」ボタンを押し、
1. ご利用者様の情報入力
2. 「J-RAPP利用申込書」のご提出(FAX、郵送)をしてください。
「J-RAPP利用申込書」受付から最短3日で、IDとパスワードを郵送でお届けします。
少し時間がかかるのでこの機会に前もって登録しておくと良いでしょう。
J-RAPP以外の複製権に基づく手続きの申込窓口は、JASRAC複製部ビデオグラム課になります。
電話番号は03-3481-2172です。
以上、まとめでした。
まずはフローチャートを確認して、あてはまらない場合はそれぞれ必要な手続きを行っていく、という形ですね。
個人の場合は特に問題なさそうですが、団体名義で行う場合は注意が必要、というところでしょうか。その他に「うちの団体のこういう場合はどうしたらいいんだろう?」と思ったときには、前もってJASRACさんにお問い合わせをしてみてください。問い合わせ先がわかりづらいのですが、基本的な音楽著作権のことや、JASRACのサイトを見ても解決しない場合は、JASRACインフォメーションデスク(電話03-3481-2125、受付時間 9時〜17時 月〜金/土日祝除く)に連絡するのが良いかと思います。
外国作品の場合、「指し値」というのが数十万という高額になるのは、経験上そんなに多くはありません。だいたいの場合は支払える範囲かなと思いますので、「うちは海外の曲が多いから無理かな」とは思わずに、まずは上記インフォメーションデスクなどにお問い合わせをしてみてください。
演奏会中止は残念だと思いますが、ライブ配信や過去の演奏会動画のアップロードが増えることでファンの方が楽しめたり、吹奏楽に興味がなかった人の目に留まったりして日本の吹奏楽が盛り上がれば、それはそれで良いことかなと思います。